『 ペンギン・マター 』
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緒方家から、ルルと姉弟が乗った宇宙船が飛び立ったのと時を同じくして、宇宙空間に浮かぶグィングィン星の旗艦『ギュギュ・ガード』の艦橋では、参謀のゴゼット・グイスと、司令官が作戦会議を行っていた。
《作戦を早める?》
 クチバシにオレンジの色差しをたくわえた司令官は、ぴくりと小首をもたげた。
《ええ。 ルル・ガーグィンによるプランTの成功はもはや絶望的です。 残り48時間、待とうが待つまいが、結果は変わりません》
《しかし、ゴゼット。 我々の主任務は、キューア姫の奪還だ。 残りわずかであっても、我々はルルの力を信じよう》
《司令 ――8時間前に、私が奴と映像通信で話した事は、すでにご報告したとおりです。 …ルルは、いつもと様子が違って見えました。 地球星人に洗脳された可能性を、私は危惧しているのですよ。》
《ルルの腕前は、私とお前が最も良く理解しているだろう。 奴に限ってそんな事は、あり得ない。 何を根拠に疑う》
 ゴゼットは四角い軍帽のふちを撫でながら、言った。
《新しい船を要求するルルに、船を送ったのは私です。 彼の言によれば、南極大陸にキューア姫を探しに向かうはずでありましょう》
《もちろんだ。 ルルは作戦を途中で投げ出すような男ではない》
《通信官。 揚陸艇4号の信号を、主画面に写せ》
 ゴゼットの命令により、
艦橋のスクリーンに赤い点が浮かんだ。 その光点は、地球の極地ではなく、大気圏を突破し、この旗艦に進路の針を向けている。
《なに…どういうことだ》
《帰艦命令などは出していません。 あの男は、一体何を目的に戻ってくるのでしょうね?》
《あのルル・ガーグィンが命令違反を犯したなど――聞いた事が無い》
《司令、あの男は、この
艦橋にやってきて、きっとこう言うはずです。 プランUを中止せよ、とね。 私やあなたに、銃を向けるやもしれません。 そうなってからでは遅いとは思いませんか。 もはや、プランUの実施は決定したも同然なのです。不安要素により作戦に悪影響が出てはいけない。 今のうちに、ご決断を願います》
 艦長は、目の前の参謀の顔をじっと見つめた。
ゴゼット・グイスもまた、ルルと同じく、ペン帝国軍始まって以来の逸材だと言われている。
 艦長は、苦悩の末に決断を下した。





 メリーランド州フォート・ジョージ・G・ミード陸軍基地内に拠点を置くアメリカ国家安全保障局(NSA)本部は、
受信した通信の内容に、混乱の度を深めていた。

我々は、遠い銀河よりやってきたグィングィン星の武人です。 南極に不時着した我々の仲間を、ただちに返しなさい。 あなた方の中に、仲間の消息を知るものがいるはずです。 我々の仲間を、ただちに返しなさい。 さもなくば、この惑星から、人類を追放します。 無返答は、抵抗の意思と看做します。 繰返します…》

「こいつは…例のE.T.の仲間か?」
NASAや各情報基地でも、同様のメッセージの受信を確認。 Kuバンド以上のチャンネルで、全世界に向けて発信されています」
「本当に宇宙から発せられているのか、確認急げ!」
「他国の情報機関にも、動きが見られます」

 時の情報長官は、このかつてない報告を受けて、血相を変えてこう叫んだという。
「これは、大統領権限の問題(プレジデント・マター)だ。 エアフォース・ワンに至急連絡を取れ!」





『ナツは、眠ったか。』
「うん。」
 宇宙遊泳に遊び疲れたナツは、雪丸が持ち込んだタオルをお腹に掛けてもらって、すっかり眠りの中にいる。
ユキは乗り物酔いが心配だったようだが、姉と楽しく宇宙遊泳を楽しんだあとは、彼女の傍にぴったりと寄り添っていた。
 遠心重力がはたらくこの部屋では、一応背中を床にあずけて眠ることができた。
『寒いか、ユキ』
「うん、ちょっとだけ」
『済まないな。 グィンたちは寒くても平気だから、この船にエアコンはないんだ。 グィングィン星の昔ながらのあったか法をためしてみよう』
 ルルはとことこと二人の足元を跨ぐと、二人の身体の間に、自分の身体を割り込ませた。
暖かな羽毛に雪丸と夏海は、ルルにしがみつくように手を伸ばした。
「暖かい」
『そうだろう。俺達は昔から、寒くなったらこうしてお互いに寄り添って暖をとるんだ。  お前も、安心して眠っていいぞ。 艦まで、あと8時間はかかる』
「うん……」
不安そうなユキの表情に、ルルは微笑みかけた。
『大丈夫だ。 艦についても、俺はお前達から離れない。 ちゃんと、地球に送り届けてやる』
 ユキは、頭を振った。 心配しているのはそうじゃない、と言う。
「お母さんとおばあちゃん、大丈夫かなあ…」
 雪丸は、声を殺して泣き始めた。 緒方一家に男手は僕一人だ、僕は最後まで戦うべきだったのではないかという趣旨の言葉を、少年は稚い言葉で涙ながらに話した。 ルルは、胸が苦しくなった。
 それでも、『大丈夫だ』と伝える以外の術を、彼は知らない。
フリッパーで、そっと少年の腕を撫でながら、ルルもまた、心の奥底にある言葉を吐露していた。
『――お前たち地球のニンゲンは、偉いよ。 家族の危機を、我がこととして受け入れ、なんとかしようと精一杯力を尽くそうとする。 俺達人鳥(グィン)は、仲間が襲われても手助けしてはいけない。 病気になっても助けてはいけない。 子供が襲われても、手遅れとわかれば放り出して逃げる。 自然の掟というのは、そういうものらしい。 そうして今まで生きてきたんだ。 お前の、誰かを守らなくてはと思うその心は、とても尊いものだよ、ユキ。』
 ルルの言葉に、ユキはぽろぽろと涙をこぼした。
 無言で涙する少年を見て、ルルは思った。 いつか彼を川から掬い上げたとき、彼は大声を上げて泣いていた。
今は、我慢するように涙をこぼしている。
『どうして大声で泣かないんだ。 泣いてもいいんだぞ』
 すると、ユキはこう答えた。
「泣いてるとこを見せたら、おねえちゃんに心配をかけるから」
『どうして心配をかけたらいけないんだ』
「お姉ちゃんは笑ってるほうがいい。 心配かけたくない」

 ルルには、思いあたる事があった。
たしかに夏海はよく、心配そうな、物憂げな表情を浮べる事が多い。 
何故だろう、普段はとても明るく、能天気な態度なのに、ひとりでいるとき、ふっと、表情を翳らせることがあるのだ。
ユキは、鼻を鳴らして、静かに話しはじめた。

 緒方一家は、少し前は別の家に住んでいたこと。
 半年近く前に起きた地震で、大好きだったお父さんと、住んでいた家を、いっぺんになくしてまったこと。
 その後、夏海の通う小学校の避難所で半年間を過ごし、この夏休みに、お父さんの実家に“引っ越して”きたこと。
 お父さんの実家に帰省するのは毎年のことだけれど、今度ばかりは違う。 この夏休みが終わったら、夏海が始業式を受けに登校する学校は、お山の近くにある、“転校先の新しい学校”だ。
 夏海がいつも不安そうなのは、これまで仲良しだった友達と離れてしまった事や、新しい学校に行くことの不安などが原因にあるはずだと、ユキは語った。
 淡々とした口調には、年不相応な苦労の跡が見えた。
「だから、お姉ちゃんが寂しくないように、僕ががんばらんと」
 そういって少年は、また泣いた。
 いつもおどけたようなユキの仕草。 面白おかしい冒険のような絵日記の訳を、ルルは理解した。
『俺は、お前を誇りに思うよ』
 ルルは、黙ってユキを抱きしめた。
そして、少年が眠りにおちるまで、ずっとずっと傍で見守っていた。





《ルル、帰艦命令は出ていない。 停まれ! 帰艦は命令違反になるぞ!》
 通信官の怒りの声を無視して母艦のゲートを潜ると、揚陸艇は自動で格納庫に収納された。
格納庫から
艦橋へは、パイロット専用の昇降エレベーター一本で到着する。
『ナツ、ユキ。 俺から離れるなよ』
ユキに、小型の受話器のような装置を持たせると、ルルはそういって二人の前に立ち、エレベーターに乗り込んだ。

『おかえり、ルル。 どうして戻ってきた?』
 
艦橋に戻ってきたルルを見て、四角い軍帽を被った親友が、恭しく帰艦をねぎらう声をかけた。
艦橋には多くの人鳥達がひしめき合って二人の対峙を見守っている。 だが、地球の言葉がわかるのは、ルルと、グイスの二人だけだ。
『決まっている。 ゴゼット、お前の謀略を阻止するためだ。』
『また、随分と物騒な言葉を使うのだな、親友よ。 地球星人に洗脳でもされたか?』
『うるさい。何が親友だ。 お前は俺の命のみならず、姫の命までをも、この計画に利用した!!』
『当然だ。 そうでなくては星を奪う大義名分が無いじゃないか』
 ――認めたな。 ルルは、自分の心が怒りで満たされる音を聞いた。
腰元に隠していた光線銃を引き抜くと、親友に向けて照準を定める。
「ルル!」
 姉弟はそれをとめようとしたが、ルルの視界にはもはやゴゼットしか映ってはいなかった。
《やはりこいつは洗脳されていますよ、司令》
《なんということだ、ルル――》
 グィンたちの群れの中から進み出た司令が、ルルを見て、悲しみの声をあげる。
それにならって、艦橋中の人鳥たちが、《なんということだ》と口々に言う。
ルルは、司令に向かって叫んだ。
《司令! ゴゼットこそ、キューア姫を攫った犯人です。 全ては、プランUによって地球を侵略するための陰謀だ!》
 ルルの言葉に、司令は静かにかぶりを振った。
《ルル、お前のような強者が、敵の洗脳に屈するとは情けない。 何を証拠に、そのような世迷言を言うのだ》
《世迷言などではありません。 俺の潜入艇が墜落したのも、こいつの工作だ。 ゴゼット、お前は通信機が復旧したとき、 俺に潜入艇の墜落原因を確かめなかった。 知っていたのだろう、お前自身が燃料セルを破壊していたのだから》
 司令・副司令・部隊長を見守る人鳥たちの観衆が、にわかに騒ぎ出した。
ルルとゴゼットの、どちらかが言葉を発するたび、そちらの方向へ、無数の短い首が、ぐいっ、と持ち上げられる。
ゴゼットは、冷笑した。
《アーズィが痛んでいたのではなかったのか。 私はてっきりそうだと思っていたが》
《ゴゼット、認めてくれ。 俺はまだ、お前が真にキューア姫を手にかける奴だとは思えない。 再び送ってもらった船には、破壊工作の跡はなかった。 姫は、南極にいるのだろう。 お前、本当は俺に、キューア姫を探し出すチャンスを与えてくれたんじゃないのか。  お前はプランUの作戦開始を、心から望んでいるわけじゃない。 そうだと言ってくれ、ゴゼット!》
《無駄だ。 もう作戦は実行段階に移っている ――司令、この裏切り者に発砲する許可を下さい》
《ゴゼット!》

バン!

 乾いた音が
艦橋に響き、紫の光芒がルルの左フリッパーを貫いた。
後ろに大きく倒れこみながら、ルルは、雪丸にケガがないことを確かめ、安堵した。
《何でだ、ゴゼット。 お前も、俺も、キューア姫も、同じ目的のために頑張ってきたんじゃないのか…》
「ルル!!」
 夏海は、悲鳴を上げた。 フリッパーから、赤い血が流れ出す。
《笑わせるな》
 震える声で、ゴゼットが嘲笑った。
《同じ目的? バカな。 お前達には分からない。 グィングィン星の危機も、古きしきたりの呪いのようなおぞましさも。本当にわかっているのは俺だけだ。 お前は経験したのか? 冬の間中ずっと暖め続けたタマゴが孵らなかったときの胸の苦しみを。 妻が定着氷を超えられず、野垂れ死んだと聞かされたときの悲しみを! 周りの者は俺の妻を“弱きもの”として見捨てた。 しきたりが悪か。 そんなものは最初から知ってる。 それ以上に問題なのは、グィングィン星が死にかけていることだ! たとえしきたりがなくなっても、星が冬に閉ざされれば、同じことはいくらでも起こる。 数え切れないほどにな》
 ゴゼットは、煙を立てる光線銃をフリッパーに填めたまま、一歩ずつルルに近づいた。
《地球星人に命を救われて情が湧いたか? ルル、お前は甘いんだよ。 地球を救って、キューア姫を救って、その先に何がある。 キューア姫なら、太陽を甦らせることができるのか?》
 そしてゴゼットは、ついに親友の額に照準を定めた。
 ルルは、弱々しい声で反論した。
《俺は、しきたりは正しくないと、今でも思っている。 だが、しきたりが無くては、もっと早くに俺達は滅んでいたのかもしれない。 俺達の祖先は、ニンゲンと同じように、科学の力で魚をとり、火をおこし、フリッパーを使わずに海を駆け空を飛んで、宇宙にまでその領域を広げた。 その結果に、海は汚れ、氷河は溶けて、星は危機を迎えた。 個人の幸せだけを追求することは、未来へと託すべき母星そのものを危険にさらす事を、先人は知ったんだ。 だから文明を捨て、自然のままに生きようとした。 …だけど、俺達は、心を持ってる。 本当に自然のままには、生きられないんだ。 仲間を見捨てるような生き方はできない。 そんなしきたりは、正さなくてはいけない。 俺達はずっと、正しきことを求めて、やってきたんだろ。 …お前の苦悩をわかってやれなくて、すまなく思うよ。 だけど、ゴゼット。誰かを犠牲にして、誰かの故郷を奪って、危機を乗り越えることが、本当に正しいことなのか? 地球星人にだって、心はあるんだ》
《お前の奇麗事にはうんざりだよ、ルル》
 悲しい声だった。 ルルの眉間に照準を定めた銃を、ゴゼットは発射しようとした。
「撃っちゃダメ!」
 その時、ルルの後ろから飛び出したニンゲンが、横たわるルルを、身を挺してかばった。
覆いかぶさるようにして、その射線上からルルを遠ざけようとする。
《地球星人が何の真似だ。 どけ》
 そして、さらにその前に、小さな少年が立ちふさがった。
「おまえ、お姉ちゃんとルルをいじめんな」
 挑むような視線に、ゴゼットは一歩退いた。 迫力に気圧されたわけではない。
 少年の眸は、恐怖に怯え、その足は、微かに震えていた。
 しかしまっすぐにこちらを見つめ、銃口の先に、自分の額を差し出していた。 彼が示した決意は、たったひとつだった。
 自らを危険にさらしてでも、仲間を守る。 家族を守る。 強い想いの顕然が、両手を広げ立ちふさがる。
その姿こそ、ずっとゴゼットが求めてきた “しきたり”の、正しき姿だった。
《ゴゼット。 地球星人は、たしかに自分の星を傷つけ、破壊しているかもしれない。 それは俺達の祖先だって同じだったはずだ。 このニンゲンの一家は、異星人の俺を『家族』だと言ってくれた。 彼らは全く異なる由来のものであっても、愛することができるんだ。 自らの愚かさを、恥じる心も持っている。 自分以外の誰かの事を思って、行動する事が出来る。 ニンゲンたちならば、地球(じぶんたち)の問題はきっと自らの手で切り開いていくだろう。 俺達も、それに習うべきだ》
 参謀は、もう一歩後ろへと下がった。
がしゃりと音を立てて、フリッパーから冷たい床へと、光線銃が落ちる。
ゴゼットは震える声をあげて、その場にへたりこんだ。
《だが…だが、ルル――もう、遅いんだ。 計画は、動き出してしまった》


《いいえ、まだ間に合います。 …地球へのメッセージは、すぐに取り消しなさい》

 その時、雪丸の手に持っていた通信機が光を納め、代わって艦橋のスクリーンに、人鳥達の女王の姿が映し出された。
ルルが、揚陸艇を降りた時からずっと、女王と通じた通信機を持たせていたのだ。
 艦橋に詰め掛けた人鳥達は、一様に「ビュータ女王だ!」「女王きた!!」と騒ぎ始めた。
 聡明で気高き女王。 彼女は、しきたりに深い悲しみを抱きながらも、それを継続することを認めてきた人鳥たちの指導者だ。
《話は全て聞かせていただきました。 ルル。 ゴゼット。 あなた方は、どちらも正しい。 私達は、今こそ先人の“しきたり”を脱して、自らのフリッパーで漕ぎ出さなくてはならないのかもしれません。 人鳥のひとりひとりが、自然の理の通りに生きる事の意味を考える必要があります。 機械文明を再び甦らせる事も、皆でもう一度話し合いましょう。 私達には時間が必要です。 惑星の冬までに、皆で協力して解決する術を見出すのです》
 ビュータ女王のその言葉に、人鳥たちは皆、一同に同意の鳴き声をあげた。

 永久に変わらないと思っていた鉄の“しきたり”が、皆の生きる希望へと繋がった。
新しい“しきたり”の元に、人鳥たちが一致協力すれば、ひとりでは自然に勝てなくても、みんなでなら勝てるかもしれない。 ――いいや、勝つのではない。 共存するのだ。
 家族を守るように、母なる惑星を守れるような、そんな生き方を考えよう。 そうして、太陽を甦らせる新たな技術を、生み出すのだ。
 ゴゼットはルルのフリッパーを手当てしながら、《すまない》と何度も繰返した。
《いいよ、別に》ルルは笑って、言った。
《お前も、俺の家族なのだから》


《『そして、地球の小さなお客さま』》
 
女王の声に、ナツとユキは、ぴんと背筋を伸ばして応えた。
「「こ、こんにちは!」」
《『こんにちは。あなた方には、大変な苦労をかけました。 私達の問題に巻き込んでしまって、申し訳ありません。 あなた達の身を挺した行動に、多くの人鳥達が胸を打たれたことでしょう。 侵略戦争は、私の責任においてすぐに計画中止とします。 …そうね、何かひとつ、お詫びをさせてください。 望みはありますか』》
「ありますっ」
 夏海は、元気な声で答えた。
《『言って下さい。 可能なかぎり、お応えできるように致しましょう』》

 女王は、柔和で上品な笑みをたたえた。
夏海は、ふんふんと鼻息あらく、こう言った。
「グィングィン星人と、人間とがケンカしないように、指きりげんまんをしてください。 あと、ルルのお姫様探しを、続けさせてあげてください!!」

《まったく、ナツのやつ。 ひとつだと言ってるのに》
ルルはくつくつと笑い、そして深い眠りに落ちていった。


 扇風機に霧吹きを噴いたあの夜。 ルルは夏海にこう問いかけた事がある。
『ナツ、地球星人は、どうして空を飛べないのだろうな? 翼がほしいと思ったことはないか?』
 夏海は、あるよ、と頷き、なんでやろう、と思案した後で、にっこりと笑顔を浮かべてこう言った。

「…あっ、わかった。 握手するためかな?」

 人も、人鳥も、大空を自由に駆ける翼を欲した事があるはずだ。
だが、神がそれを与えなかったことには、たしかに意味がある。
未来は、変えられる。 ルルは、強くそう信じた。
グィングィン星の再生のために、皆で共に力を尽くそう。





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2012.7.30 Update.

  


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